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ありがとうございます

 投稿者:KAOKAO  投稿日:2016年 5月 9日(月)03時58分40秒
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  まる様
ご心配かけて申し訳ありません(汗)
でも、優しいお言葉、嬉しいです♪ありがとうございます。



『肩を痛めた。悪いが大学まで来てくれ』

火村からそんな連絡をメールで受けた。
時間指定はないが、そんな連絡を入れてくるなんて痛めた肩はかなり具合が悪いのだろう。そう思って折り返し携帯電話に電話してみたが出やしない。
出られないのか? 出ないのか?
仕方なしにメールで問い合わせる。


『ひどいけがでもしたんか?』

するとこちらは即答。

『ドジった。ひどくはないが、運転ができない。以上。』

というレス。これ以上の説明はしないという意思がありありだ。メールから読み取れるのは、『運転手希望』ということ。
私は携帯電話と財布だけジャケットのポケットに入れて、自宅を出た。



「うら若き女性と抱き合ったまま階段落ちしたんやって? 火村」
火村の研究室に入るなりそう言ってやると、接客用のソファに寝そべっていた火村が冷たい視線で出迎えてくれた。
「誰情報だ? そんな下らん言い回しするのは」
寝そべっていた火村の右腕は見たところどうもなっていないというか、ジャケットを着ているのでよくわからない。ただ、机の上に三角巾が置いてあるところから、肩を痛めたというのは本当のことなのだろう。
「じゃあ、本人から事の顛末教えてもらおか」
「その様子じゃ、聞いているんだろ?」
「階段の踊り場で出合い頭にぶつかったか弱い乙女が階段を落ちそうになったところ、ヒシっと抱きしめて階段下まで転げ落ちた」
「───大体あっているが、訂正箇所がいくつか」
「聴きましょう?」
だらしなく寝そべったままの火村の傍に寄り、膝をついて顔をのぞき込むと、不機嫌そうな表情が少し和らいだ気がした。
「出合い頭は正解だ。向こうが駆け下りてきた。ぶつかったってのは不正解。ぶつかる前にあっちがよろけてバランスを崩した」
「そうなんか?」
「ったく、大学にあんなバカ高いヒールで来るなってんだ」
なるほど。
「それで落ちそうな乙女を助けようと抱きかかえて落ちたっていうんか」
「そこも不正解。腕にしがみつかれて一緒に落ちた」
「抱きかかえて?」
「そこは否定しない。とっさの事だ。なにせ相手は“お客様”だからな」
イメージが浮かぶ。ぶつかりかけて驚いた彼女はよろめいて、とっさに火村に取り縋り、受け止めるのが無理だと判断した火村は彼女を抱きかかえ、庇うようにして階段を転げ落ちた。
「あと、訂正すると転げ落ちるなんて大げさすぎる。右肩から倒れて強打しただけだ」
「そうなんや。で? 乙女は無事やったんやろな?」
「さっきから気になるな。乙女じゃない。ただの学生の一人だ。……妬いてるのか?」
どこをどうしてそんな話になるのか。つくづくこの男は解らない。
「違うわ。ちょっと嬉しいんや」
「嬉しい? おい、アリス。それはないだろう? ケガして落ち込んでる恋人に対して」
火村かケガをするのはそれは心配なのだが、こんな風にとっさに人を守る行動をとれる人間なのだと実感できるのが───
「嬉しいで? あかんか?」
火村の性格はかなり捻くれてはいるのだが、根幹は人が困っていることには目をつぶれないところがあるということをこうして実感できる。
あのフィールドワークでの火村はどこか人間離れした感じさえするのに、こうして人間臭い行動や失敗をするのだと目の当たりにできることがこんなに嬉しい。
「まあ、恋人としては女の子と抱き合ったってのは不可やな。仕方ないけれど」
「なんだ。やっぱり妬いてんじゃねぇか」
そう言って笑った火村の唇に、「その通りや」と囁いてから口づけた。



ケガネタ話。逆バージョン(笑)
 
 
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